あたしには、散りゆく花びらが血に見えた。
まるで命の燈火が消えていくよう。
あの男…伊織の血は何色かしら――。
冷徹で冷酷な色をしているに違いないと、今ほど本気で思ったことはない。本質というのを、見誤った。いや、違う。サインは出ていたのに、あたしが見逃して気づかなかっただけ。
伊織はよく口にしていたのに――。
ユキノのことを“ユキノ”と呼ぶのは、
ユキノの前だけで。
ユキノが居ないときは、常に“アレ”や“妹”だったのに――
死んだ
死んだ
死んだ
死んだ
死んだ
「……ハハッ」
あたしは冥福なんて祈る気はない。これっぽっちも祈りたいとすら思えない。
夕焼け空が、燃えるような赤に染まっている。

