エンビィ 【完】





「“いたずら天使”」


「いたずら天使?」




そんな意味だったっけ?



想像していた……違う。

頭の中でアイリーンのフェアリーテールが壊れていく気がした。

難しい顔をしたあたしを、ユキノはパンにバターを添えながら見てくる。



大人しくユキノについて来たのには、2つ理由があった。



1つ目はこれ。 


でもまあ―――これに関しては、疑う余地はなく。



アイリーンのフェアリーテールは、

ユキノと天才ピアニストのフェアリーテール。

少し脚色が入っていたらしいけど。



この世で、唯一人のためにしかピアノを弾かない約束しているユキノが、ピアノを弾いた理由。

その唯一の人が許せばいいだけの話。



“今回だけだよ……次はこんな真似させない”

あの時は理解できなかった会話が、今ならできる。