「はい。到着〜」


『ありがとうございました』


こけないようにゆっくり下りてヘルメットを新先輩に渡す。


電車の時刻まで少しだけ時間がある。

「いやー、今日で一気にゆーちゃんのイメージ変わったなぁ」




ゆーちゃん?
あ、ゆずだから?


『アハハ!ゆーちゃんて(笑)てゆうかそれはこっちのセリフですからー』


「え?うっそ!最初どんなイメージだった?」


『んー、なんか…無口というかクールというか?』


首を傾げながらあたしは最初の新先輩を思い出す。



「えー俺そんなんだったの?」


『はい』


「そぉゆうゆーちゃんはかなり大人しいイメージだったけどね」


『えー?』


どこをどう見たらそぉなんの?


「つーか!!」


『えっ』


「最初ゆーちゃんが面接来た日!厨房通って中入って行った時俺とめちゃくちゃ目が合ったの覚えてる?」



えー、目……合った?



『…………(笑)』


「覚えてないのかよッ!」


『だってそんな前の事…顔とか知らない人ばっかだったし!』


「まぁそりゃしゃあないか(笑)でも不自然なくらい目合ったのになぁ。俺だけ覚えてるとか虚しっ」


『アハハ(笑)そんな事言われてもー。あっ…』


「ん?どした?」



もうそろそろ電車が来る。



『電車もうすぐだ。じゃああたしはこれで!』


「そっか。おう!じゃあなぁ、気ぃつけて!」


『ハイ!今日はありがとうございました!』


ペコッと頭を下げて顔を上げると新先輩はニッコリ笑って手を振りながら走り去って行った。



あたしはというとそのまま電車に乗りさっきの楽しい時間の余韻に浸りながら帰った。



今日は何だか特別な日だった気がする。
明日は昼からバイトだ。


新先輩はどうなのかな。


何故か明日のバイトが楽しみだ。口元を緩めながらあたしは静かに目を閉じた。