「ここだよ、ここで依頼者が待ってる。入んな」
男に案内された場所は、大きな板に“桜”と書かれた駄菓子屋だった。
駄菓子屋“桜”...。
確か、未羽たちが裏路地にある美味しい駄菓子屋、と騒いでいたっけか。
こんなところにあったとは。
ガラガラとドアを開ける男に続き、案内された場所は地下の大部屋だった。
大きなソファが2つ、並んでいる。
「ちょっと待ってな」と言い残して、男はさらに奥の部屋へと消えた。
関口くんと二人きりの空間。
それは、なんとなく気まずくて。
関口くんは何故あんな場所にいたのか、とか、聞きたいこともあるけれど話せるような空気でもなくて。
多分、あたしがあの人と知り合いじゃないこと、勘づかれているんだろうな。
と、そんな空気を破るようにして男が二人の男女を連れてきた。
関口くんは女の人をチラリと見てから、俯いて顔を上げない。
あたしはあたしで、男の方を見て驚いた。
やけに整った顔に、伸びしろの無さそうな低身長。
フード付きパーカを羽織ったそれは、学校で伝説と噂されるほどの男だ。
頭脳明晰容姿端麗運動神経抜群。
学校には滅多に来ないくせに成績だけはずっとトップ。
「清水、先輩...」
たまに遠くからでも見かけるとラッキーなくらいの清水先輩。
それが、こんな間近に...
「...ああ、この前の集会で転けてた人だ!」
そして、あたしの最新黒歴史を発表するなんて。

