人が絶えない歩道をずっと真っ直ぐ進み、ロー○ンが見えた角を左へ曲がる。
薄暗く、人一人しか通れない程のその細い道を、突き当たりまで行く。
すると、左右に曲がれるT字になっていた。
...どっちだったっけ。
どっちか忘れたから、適当に右に曲がることにした。
とりあえず突き当たりまで進んでみるけれど、あることに気付いてしまった。
「迷った...」
ひとつの目的地があってこの道にいる筈であり、ちゃんと道も調べてきた筈なのだが。
自分が方向音痴なことを忘れていた。
ここからどう進もうか、戻るにも戻り方も分からなくなっていた頃。
────近くで、体が震える程の大きな音がした。
...いや、本当に揺れている?
あまりに突然のことに驚いてしまったが、今の“目的”に近付けると判断したあたしは、その振動の元へ向かうことにした。
細い路地を音だけを頼りに曲がり進む。
と、少し進んだところで喋り声が聞こえた。
「...れは、おま......たす...ろって...ら...されたの」
「ッざけんな!来んじゃねえ化け物が!!」
歩を運ぶごとに鮮明に聞こえる会話は、男どうしが喧嘩しているように感じた。
フェンス越しに見える場所に着いたころ、1人は緑色の瞳の長身の男であることが見えた。
もう一人は、丁度死角になっていて見えない。
「別にお前が一緒に来てくれたら俺はそっちまで行かなくていいんだって。つーか来い」
「あぁ?」
どうにも収集のつかなさそうなやり取りをしている中、無理矢理もう一人の顔を見ようと体を精一杯捻ったら。
...あ。
なんとか、ぎりぎりだけど。
もう一人の顔を見ることができた。
...関口くん。
隣の席の関口くんだ。
なんかよく分かんないけど喧嘩が強いってことで学校でも有名な男の子。
喋ってみたらフレンドリーだしそんな感じしないんだけどね。
...ふうん。
目が緑色の能力者に関口くんが絡まれてる、か。
中々利用できそうじゃん。

