真っ白のTシャツに黒のスウェット生地のズボンを履いたその男は、全くあたしたちを疑っていない様子。
前々から知っていたかのように、できるだけ自然に、妥当な返事をする。
「何が?」
「侵入者だよ。桜かもしれねえんだろ?」
「......そうなのか?」
「おう、もし桜だったらまじぶっ殺すし」
そう言って彼は胸の前で手と手を合わせ、音を鳴らしている。
.......どういうこと。
桜と椿ってそんなに仲悪いの?
殺されるほど?え?
無言でハルを見つめると、全力で首を横に振られた。
ハルも理由を知らない、のか。
大体何故桜かもしれないと言える。何故桜“だったら”と言う。
あたしたちは気付かなかったけれど、あたしたちの会話の様子を見ていた椿さんが、その男を呼び、何かを指示した。
椿さんがいる方から、彼は音を鳴らさずに歩いてくる。
その後ろで椿さんは───、
不敵に笑んでいた。
なんだか、嫌な予感がする。

