ナルが言うには、あの男の“あたしたちと出会ったことの記憶”を消し、さらに脳波を刺激して数十秒間気絶させたらしい。
...あの短い間にそんな複雑なことを。
一部の記憶のみを消すのは難しいことではないのだろうか。
彼が気絶してくれているその隙に、階段を登りきる。
「...さて問題です」
と、階段を登った先の部屋に入ったところでハルが人差し指を掲げた。
神妙な顔をして言うそれに何事かと期待したのだが、期待外れだったかもしれない。
「......次、右と左どっちだと思う?」
苦笑い気味に言うそれを、ナルはまた、ため息をついて的を得た言葉を放つ。
「自分で確かめたらどうなんですか 」
「俺神経使う作業苦手なんだって。知ってるだろ?」
「...僕だって得意じゃないんですけど」
彼らが話しているのは、人の気配の察知。
つまり、第六感のことだ。
簡単に言えば、勘。
だけどそれは、能力を開放した際に研ぎ澄まされたりもする。
「あたし、やろっか?」
そして、あたしの得意分野だったりする。

