階段は、いろんな場所へ繋がる危険性の高いところだ。
屈んで行く、というよりは全員音を立てないよう早足で進む。
...え、あれ。
あたしも“密入”とかしたことあるけどこの二人慣れすぎじゃない?
速すぎて春野さん追いつけてないんですけど。
と。
「!?」
階段の上から、一人の青年が下りてきた。
見知らぬ人物らに驚いていたが、やがて戦意と警戒に変わっていった。
ハルは「やべ」と呟いて、先頭をナルとバトンタッチする。
はあ、とため息をついたナルは、少し怯えながらも瞳の色を変化させた相手を見据える。
...あの人、多分能力に慣れてないんだ。
急に上がった自分の身体能力に浮ついているように見える。
「すみません、不法侵入して」
「...は?」
素直に謝ったナルに、相手は大きな隙を見せた。
相手との間を一瞬で詰めたナルは、動揺する彼の頭を片手で掴む。
「報告されるとマズいので、とりあえず記憶を消させてもらいますね」
笑顔で言ったナルの瞳は済んだオレンジ色で。
少しの間があったかと思うと、パタりという音と共に男は倒れ込んだ。
その様子はあたしの深い記憶の片々を刺激する。
なんだ、この既視感は。
『おやすみ、嬢ちゃん』
なんだ、この忌まわしい声の記憶は。
なんで今思い出す...?
ナルは、別の人間じゃないか。
重なって見えるわけが────

