男の緑色の瞳をぐっと見つめ、改めて自分の頭の中で整理してみる。


能力者。

それは、太古に存在した“魔法使い”の子孫だと言われている。

先祖が力の強い魔法使いの者が結婚した場合、稀に生まれるらしい。

先祖が魔法使いで、さらにもう片親の先祖も魔法使いで。さらに何百分の一の確率で生まれてくるらしい。


その子供は本来人には在らざる力を宿し、力を開放させることで特殊な能力を使うことができるという。

特殊な能力を使わずにも常人を遥かに上回る身体能力を持つため、人を傷付ける恐れがあり、政府からは危険視されている存在だ。


もし能力者を目撃したら警察へ電話すること、それは世間での一般常識となりつつある。

警察へ電話すれば、政府が部隊を寄越し、その能力者を捕縛するのやらなんやら。


現在も数名の能力者が政府によって保護されており、まだ一般人に紛れて生活している能力者がいると推測される。


───とかなんとか、ニュースでやってたっけな。


これは、多分、今、危険な状況にあるのだろう。

男は今、脅されているということに気付き、なんとも賢明な判断に出た。


「路地裏に入ってくところを見かけて、美人だと思ったから声を掛けたんだよ。他には何も───ああ、確か“ちいちゃん”って名前だった気がする」


全部、知ってることを早く吐いた方がこの場からすぐに立ち去れる。

そう、思ったからだ。


「...“ちいちゃん”、ね。あんがとよ、兄ちゃん」


男は小さく笑み、振り向きざまに手を振って去っていった。


...能力者なんてものは、初めて見た。

国で決められてるとおり、化け物じゃねえかよ。


とてもキレイに笑っていた“ちいちゃん”の顔を思い出して背筋がぞくりとした。