そして、ほかの客が全て避難し終わった頃。
二人の男は、舌打ちをしながら走り逃げようとしていた。
大きな鞄を持っているところを見る限り、強盗でもしてきたのだろう。
その後、人に紛れるか人質をとるかして、能力者から逃げようとしたのだろうか。
......その為に、未羽はこんなに震えているというのか。
***
“助けてやる”。
そういう意志でこの場にいるのだが、どうにも客の逃げ足が遅い。
それに、目の前にいる女子高生二人に関しては立ち上がりすらしない。
────と。
一人の女子高生が立ち上がり、こちらを振り返ると小さく笑んだ。
その笑みはまるで、僕を小馬鹿にするような、嘲笑うような...。
とにかく、腹立たしく感じた僕は、先ほど銀行強盗に出くわした二人の男を捕らえようと一歩、足を踏み出した時だ。
能力を開放し、身体能力を常人の何倍も引き上げている状態で、だ。
それは、目で追うだけでも精一杯で。
それは、気付いたら全てのことを終えていて。
それは、──────笑っていた。
少女は、目に追うだけでも精一杯、と言える速さで男たちの獲物を落とす。
さらに、不敵な笑みを浮かべながら足元をすくい、相手の動きを封じる。
能力者の中でも能力値が高い方である僕でも、あんな速さは有り得ない。
普通、一般的な能力者で通常の数倍の身体能力を可能とする程度だ。
あれは、もう、数十倍...、いや、それ以上のものかもしれない。
一体何だっていうんだ。
ただ、その場にいた女子高生じゃないのか?
能力者にしても、たまたま出会えるレベルのものなのか?
自嘲的な笑みを浮かべ、人を殺せるくらい冷たい瞳で自身の手を見つめている。
今の僕は通用しない、そんな世界。
それを感じると、背筋が少し強ばった。

