ノンストップメモリーズ





「能力使って逃げてきた」


ニカ、という効果音が当てはまりそうなくらい元気良く笑う。


「何の能力なの?」

「空間移動っていうんだけど、周りから見たら瞬間移動みたいなモンだよ」


ポケットに入っていた紙を取り出し、先輩は右手から左手へ移動させた。

瞬間移動とどう違うのだろうか。

能力を使ってる自分の感覚の問題...?


「...つーかさ、反応薄くない?俺が能力者って知っても驚かったよね。俺、千衣が能力者って知った時頭混乱してたんだけど」


不貞腐れたように口を尖らせて瞳を見つめられる。

...この人、こういうこと無自覚でやってるからあんな騒動になるんじゃないの?

顔が良いんだから少しは意識すればいいのに。


「いやあ、何というか...孤児院の時にはもう知ってたっていうか...」


目を逸らして言うと、「えっ」先輩は目を丸くした。

...やっぱり気付いてなかったか。


幼い頃って自分の力を制御するのも苦労するものだからなぁ。


「何回かあたし、直接物を取り上げられたりしてた時...すごい力で引っ張られて、顔を見たら、その...」


瞳の色が桃色に染まっていた。


相手が気付いていないことをあたしが一人で知っているのは何処か申し訳なくなり、何だか言いにくかった。

言葉の続きを理解した先輩は、しゃがみこんで顔を抑えている。


「マジか...、千衣だと思って油断してた...」

「なっ、い、いや!て、いうか!あたしと先輩、今変な噂流れてるんだから一緒にいない方が...!」


不覚にも、突然変なことを言い出すものだから、焦りからどもってしまった。

そうだ、あたしは今ピンチなんだ。


「変な噂...?よく分かんねーけど、俺のこと“シズ”でいいよ。みんな先輩って呼ぶから千衣にすぐ反応できねぇ」

「だからそういう、〜〜〜っ、とにかく!昨日一緒に帰ったことが拗れて噂になってんの!!」


何なのこの人。

無自覚無敵じゃん。

憎らしいくらい笑顔が輝いててほんと...、......人気あるのが分かる。


と。


「千衣...?」