薄暗い路地の奥。
フードを被り、マスクをし、スカートを身につけた長身の女が一人の男に絡まれていた。
「姉ちゃん、俺とちょっと遊ばねえ?」
「......」
ありふれた言葉と態度、動きで執拗に迫る男に対して少女は全てを無視し続けていた。
「...なあ、ッおいてめえ、ナメてんじゃねえぞ」
何度口を開こうが何の反応も示さない少女に手を上げた男は、
────気が付くと天を仰いでいた。
「......は?」
何がなんだか分からない男は、横で自分を見下ろす少女に顔を向ける。
そこには、先ほどとは違う、美しく染まった金色の瞳で見つめる少女が立っていた。
「楽しかった?あんなことしてて」
少し目を細くして、さっさと立ち去っていった。
ひとつ、四角い物を落としながら。
男はそれを拾うと、側面についていたスイッチを押してみた。
すると、自分の声が流れてきた。
ボイスレコーダー...。
さっきの様子が全て録音されていたらしい。
男はそれを聞いて急に恥ずかしくなり、顔を赤らめた。
と。
「なあ」
透明感のある、少年のような声がした。