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昼休み、机で寝ていたのだが、目を覚ますと教室がいつも以上にざわついている。

...何があったというのだ。


「あ、千衣おはよ。今から清水先輩が来るんだって!男子寮の近く通った子が制服姿見かけたらしいよ!!」

「え、でも今昼じゃ...」

「昼だからこそだよ!昨日ちょっとした噂が流れて、その真相を確かめるんだよ!!」


いつもより数段テンションの高い未羽は、あたしに説明するだけして窓側の野次馬に混じりにいった。

...あれ、あの人こんなに人気だったっけ。


未羽もおらず、というかクラスのほとんどが窓側に集合していて暇なため、あたしもそっちに行ってみることにした。


と、丁度校門からシズ...清水先輩が見えた。


噂、とは何事だろうか。

能力者であること、とかじゃなかったらいいけど。

...あれ、そう言えばあたし、あの人たちの能力知らないな。

あたしだけ教えて不公平じゃない?

今日、桜に行ったら聞いてみよう。


と。


「ちょ、あれうちのクラスじゃない?!」
「ここに向けてるよな?!」
「うわ誰!!」


突然盛り上がりを見せた。


何事だ、と思い身を乗り出して清水先輩の方を覗くと、

───絶句した。


口の形を母音イにして全力で手を振っていた。


...あれ、あたしじゃないよね?

もしかしなくてもあたしじゃないよね?


未羽の方を見れば目をハートにしている。

...あの子も清水先輩ファンだったのか。

他の友だちも、みんな先輩に釘付け。


手を振るのをやめた先輩は、玄関でも沢山の人に見られていた。

...でも、話しかける人は誰一人として存在しない。

なんで、そんなに騒いでいるのに話しかけないのだろうか。

友だちとかは?

...さすがに友だちなら教室で待ってるか。


と、先輩が見えなくなって徐々に静かになってきた頃、教室の人気が少なくなったことに気が付いた。

何事だ、忙しい。