ノンストップメモリーズ





あたしは、能力者組織“桜”の一員になりたくてこの街に来たといっても過言じゃない。

でも、その理由を話すわけにはいかないんだ。

それ以上に、自分を教えることを怖いと思う。

よく考えなくても、こんな構えで仲間にしてもらえる訳ないのにね。

なんであたし、何の準備もなしに此処に来たんだろ。


目の前で、しかめっ面で考え込む男を見て改めさせられる。


「...俺の名前は“ハル”だ。アイツは“シズ”。お互い本名は知らねえ。お前も自分の名前考えとけ」

「...........へ、」

「あーもう、お前のこと認めたってことだよ!焼き印取ってくるから待ってな」


.....っ、嘘、あたし...、仲間にしてもらえたってこと...?

思わず清水先輩の方を振り返る。


「...っお、おう。良かったな!」

「〜〜〜〜〜!!」


突然驚いたようだったが、とにかく認めてもらえたってことだ!!

こんなに、嬉しいものなのか。

人に認めてもらえるということは。


しばらくその余韻に浸っていると、ハルさんが箱を持って戻ってきた。


「なんで...、なんであたしを信じてくれたの?」


その箱を机の上に置いたと同時に、聞いた。

勢いづきすぎて少し引かれた気もしたけれど、今は嬉しいから気にしない。


「普通、自分に損なこと言わねえだろ。それを全部バカ正直に答えやがって...。信じるしかねえだろ。シズの知り合いだったらしいしな」

「あ、ありが...」

「でも!信じてはいるが疑ってない訳じゃない。これからも変な真似したら追い出すからな」


と、ハルさんが最後の忠告とでもいう風に言ったところで、清水先輩がゴッという鈍い音を鳴らしてハルさんの頭を殴った。

「イダッ」というハルさんを無視して清水先輩は話す。


「俺たちのことは呼び捨てでいいし、タメ口でいいから!シズって呼べな!」

「し、シズ...」

「おう。呼びやすいだろ」


弾けるような笑顔で笑う先輩...んんっ、シズは、今までの学校でのイメージと180°変わっていた。

もっとプライドとか高い人かと思ってたけど、なんか、安心した。

昔のマキくんとシズは、同じ人で良かった。