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「...お母さん、これ。ごめんなさい。マキくんにやられた」
あたしがまだ8歳のときの出来事だ。
割りと小さな孤児院に預けられたあたしは、同じ部屋になった“マキくん”に嫌がらせを続けられていた。
こう言ってお母さんに物を差し出すのが日常だった。
今日はこの前買ってもらったばかりの靴。
当時、感情を表に出すのが得意じゃなかったあたしは、自分の気持ちを謝ればいいのか悔しがればいいのか、よく分からなかった。
そんな時、マキくんが大広間の中央で突拍子もないことを言い出した。
「よっし、全員好きな奴公開しようぜ!!」
満面の笑みで言うそれは、嫌がらせなのか遊び心なのか真面目なのか。
全く分からないがとりあえず自分は関わりたくないと思った。
のに。
その思いは儚く散るのだ。
10歳の兄ちゃんと、8歳の女の子。
何ガキに言ってんだ。
8歳のあたしからしたらマキくんはとても兄ちゃんだったのに。
「千衣、好きです!俺と結婚してください!!」
その瞬間、全ての時間が止まった気がした。
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「...あれ、覚えてるんですか、清水茉希(しみずまき)先輩」
「いやいやお前の方が覚えてんの?!やめてほんとやめて忘れて」
「あの時、あたしほんっとに恥ずかしかったんですよ?!死にたいとすら思った」
「俺の方が今死にてえよ何で覚えてんだよおおおおおお」
顔を真っ赤に染めて悶えるその姿を、少しでもかわいいと思ってしまうあたしがいた。

