私がお嬢様をやめる時

俺は素知らぬ顔をして
クローゼットを開ける。


クローゼットの中は
まるで喪服が並んでいるかのような
女の子のクローゼットとは思えない
暗い服ばかりだった。

どうやら黒が好きらしい。
というか…心の表れか…？

俺は服を用意しながら
サイズをチェックする。
菜々穂が大学に行っている間に
もう少し女の子らしい服を
用意しようと思った。


ここでも少しからかってみるか…


俺は服を持って
クローゼットの前で菜々穂を待つ。


「ねぇ…
いつまでそこに立ってるつもり？」


布団をかぶりながら俺を睨む。


「なにか問題でも？」


そう言うと
彼女がムッとしたのがわかった。
俺はあえて無表情だ。


「大ありよ！
着替えられないじゃない！」


「お手伝いいたします。」


そう言うと
菜々穂の顔は真っ赤になった。
なかなか可愛い反応
できるんじゃないか。


「ふざけないでよ！！出てって！！」

俺から服を奪い
強引に背中を押して追い出す。

俺は退屈な職務に
楽しみを見つけた気分だった。