翌朝訪れた豪邸。
さすがあの金額を提示するだけある。
俺は豪邸へと足を踏み入れた。

外見もすごかったが
中に入ると
日本にいることを忘れるような
立派な家だった。

ただ何だろう
この家はものすごく静かだ。

見当たるのは数人の使用人。

住人が見当たらない。依頼主はどこだ?


「あなたが本日から
菜々穂お嬢様の
執事をされる方ですか?」

一人の使用人が声をかけてきた。

「はい。お世話になります。」

俺はペコっとお辞儀した。
その人に案内され
大きなリビングに入ると。


「菜々穂お嬢様。
執事が到着しました。」

ソファーに座る女性の後ろ姿。


「あの…旦那様は…。」


俺は使用人に尋ねる。
すると使用人は首を振る。


「じゃあ、他に誰か…」


「誰もいらっしゃいません。
この家には菜々穂お嬢様のみです。
その話は後ほど…。」

そう言って使用人は部屋を出て行った。