私がお嬢様をやめる時

初対面の菜々穂は何も喋らず
水嶋さんに心を閉ざしていたらしい。

でも、すぐにそれは
あの家庭環境のせいだとわかった。

あんな広い家で、話し相手もなく
無駄に大きいダイニングテーブルに
ポツンと座って黙々と食事をする。
その光景は悲惨だった。


それは
私が想像していた通りの光景だった。

早くにお母さんを亡くして
お父さんも海外に拠点があって。
ただ、お兄さんがいたから
さみしいなんて言わなかった。

でも、お兄さんが確か数年前に
出て行ったって言ってた時
ものすごくさみしそうだった。

あんな広い家に
とうとう菜々穂だけになって
どれだけさみしい生活なのかと
心配していた。

それでも、あんな家でたった一人でも
菜々穂は毎日しゃんとしていた。

本当は
さみしいって泣き出したいだろうに
強がってる。

水嶋さんは
初めは不満で無表情だったけど
今度は同情を隠そうとして
無表情をキープした。

少しでも気を許したら
菜々穂を哀れな目で見ちゃうから。

あの菜々穂がそんな風に見られたら
ますます傷つくと思ったらしい。