私がお嬢様をやめる時

水嶋さんはゆっくりと話をしてくれた。

水嶋さんは所属している会社の中で
かなりのエリートらしい。

そりゃそうだよね。
水嶋さんに不得意なことがあったなんて
聞いたことがないもん。

言われた事は
どんな事でもやり遂げられる。

そんな水嶋さんに依頼が来た。

それが20歳のお嬢様の執事。
水嶋さんはもっと立派な人の
執事になれると思ってた。
自分の力を発揮できる人に
仕えると思っていたのに
仕事の依頼はお嬢様の執事だった。


「どうして断らなかったんですか?
断ることも出来たんでしょう?」


「会社の命令だった。
菜々穂の父親は俺が提示してる契約金の倍払うと言ったんだ。

もともとの契約金だって
かなりの額なんだ。

でも、それの倍払うなんて言われたら
そんな美味しい話
会社が断るわけない。

俺に断る権限はなかった。
だから諦めて契約したんだ。」

菜々穂のお父さんは
菜々穂のそばにいられない分
最高の執事を
菜々穂に与えようと考えたんだと思う。