私がお嬢様をやめる時

「いえ。そういったものとは
無縁ですので。」


さらっと返ってきた答え。

無縁てことは…



「水嶋って彼女いないの?」


これはチャンスとばかりに
私は水嶋のプライベートに踏み込んだ。


「そういった時間はありませんので。」


「じゃあ奥さんがいるとか?」


「独身です。」


そう言って
これ以上詮索するなと言わんばかりに
私に背を向けて離れていく。


「水嶋。」


私はそれを呼び止める。

水嶋はこちらを振り返らず
背を向けたまま立ち止まる。