私がお嬢様をやめる時

私はディナーの間
ずっと水嶋を見ていた。


うぅ…なんて切り出そう。


私はあの誘いを断りきれなかった。
いや…断りたくなかった。
が正しいのかな。

水嶋とイルミネーションを見たかった。


素直にそう言えたらどれだけ楽か…

「お嬢様?」

私の不審すぎる視線に気づいた水嶋が
やって来る。


「何がお口に合いませんか?」


「イルミネーション。」


「は?」


「イルミネーション見たことある?」


私はなんてバカなんだろう。
唐突にも程がある。


「イルミネーションですか?」


そういえば水嶋って
彼女とかいないんだろうか…

この家に住み込みだし
休みという休みもない。
そんな状況で彼女がいなくて
当たり前だと思っていたけど
実はいるんじゃないの?

それどころか
奥さんとか家族がいたりして…

まぁ
それはそれで諦める理由になるし…

って…いいわけない。
彼女や奥さんがいたら
私はどれほどショックを受けるだろう。


今まで水嶋のプライベートを
一度も聞いたことがなかった。
そもそも自分の話なんて
して来ないし。