「あら、玲奈ちゃんお帰りなさい。
今日は早いのね?」


私の大嫌いな女の声。
私に話しかけないで。
私の名前を気安く呼ばないで。


「そんな、無視しないでちょうだい。
ママ悲しいわ…」


うるさい。うるさい。うるさい。

あなたをママだなんて思ったこと
一度もない。
これから先も私のママは
たった一人よ。


私は女を無視したまま
薄暗い和室に追いやられた
仏壇の前へ座った。


「ママ…ただいま。」


お線香を上げる。安心する匂い。
そして同時にこみ上げるさみしさ。
写真の中のママはいつも優しい。


ママは悔しくないの?
私は悔しいよ。
我が物顔で
私たちの思い出が詰まったこの家に
あんな女が居座ってる。
私は絶対この家を出ない。
あの女に乗っ取られないように
守るからね…