「でも驚いたわ。」


私と清美は首を傾げる。


「あの、あの水嶋さんがよ
倒れた菜々穂を抱きかかえて
あの男になんて言ったと思う!?」


私と清美は顔を見合わせる。


「うちのお嬢様にふざけたこと
してんじゃねぇよ!!
って言ったのよ!?
それもすっごく怒った顔して。
普段絶対顔色一つ変えないのに…」


うそ…
あの水嶋が?信じられない。

きっと玲奈は話を盛っているんだ。
そう思おう。
あの水嶋に感情なんてあるわけない。


「水嶋さんてさ…」


玲奈は一瞬言おうかためらった。
しばらく黙って言葉を選んでいる。



「菜々穂の事
すごく大切にしてくれてるんだね。」


…お父様の言いつけだからでしょ。
あのお父様のことだから
きっと会社の給料の他にも
いくらか渡しているはず。
私にもし何かあって
辞めさせられたら困るからに
決まってる。