私がお嬢様をやめる時

中には大きな四角い二つ折りの
厚紙が入っていた。

厚紙を広げる

写真だった。スーツの男の人。
写真スタジオで
撮影したと思われる写真。

そう…
これは見合い写真。

「そろそろかな…と思ってね。」


「そろそろ…?」


兄は嬉しそうに話す。


「彼は35歳の実業家の人でね
親父の知り合いの息子さん。

菜々穂もあと1年で卒業だ。
そろそろ縁談の話を進めたいと
親父から頼まれたんだ。

菜々穂がこの家で
毎日寂しい思いをして生活している事を
僕も親父も申し訳ないと思ってる。

彼は非常に真面目で
経済的にも裕福だ。
きっと幸せになれる。

菜々穂がこの人と結婚して
この家を出れば
もう寂しい思いをしないだろ?」