「お嬢様…」

「お嬢様じゃない。菜々穂よ。」

あの水嶋が困った顔をして戻って来る。
水嶋を見上げる。



「水嶋に出来ないことなんて
ないでしょ?
この2時間だけでいいから
カップルのフリして。」



やだ泣きそう。
自分が何をしてるのかわかってる。
こんな事したら
私の気持ちが
ますます大きくなっちゃう。


私は水嶋を諦めなきゃいけない。
これ以上好きになっちゃいけない。
でも、水嶋が私の手を取った瞬間
水嶋への気持が溢れちゃったんだ。




私の差し出されたままの手を
水嶋は優しく包み込んだ。