達央は自宅に戻るとドカッとソファーにもたれるように座り
両手で顔を押さえた。
「ああぁ・・・本当に面倒くさい事になって・・・ごめん。
 俺的には果絵さんじゃなくて優花とのツーショットが良かったんだけどな・・・」
多分、達央なりの気遣いなんだと優花は感じた。
でも実際は相当なダメージを受けている様に思えた。

横田の前では飄々(ひょうひょう)としていたが、それは見せかけで本当は
達央は今後の事を考えている様だった。

横田の目には自由でマイペースに見えているが
達央の本心を知るのは優花だけだろう。
考える事があるのならそっとしてあげたい。

それに短期だとしてもここで達央と一緒に生活をしている事が
ばれたらもっと達央に迷惑をかける。
やっぱり今は一緒にいない方が彼のためになる。
優花は立ち上がるとキッチンへと向った。
「優花?」
「あっ・・・コーヒーを入れようと思って・・・」
達央がホッとする様な表情をした事を優花は知らない。
電気ポットに水を入れスイッチを押す。
そしてすぐ上にある棚からマグカップを2つ取り出した。
それは優花が先日アパートから持ってきたものだった。
従妹の結婚式の引き出物でブラウンにクリームのドットとクリームにブラウンのドット柄で
人気のインテリアショップのペアのマグカップだった。
もらった時はなんとも思っていなかったが
今は引き出物がこれでよかったと思いながら達央のキッチンの棚に置いた事を
思い出していた。
ドリップコーヒーの外袋を開けマグカップにセットをした。
「達央さ~~ん」
「何?」
達央に聞こえる様に少し大きめの声でマグカップを見つめ・・・
「・・・・私、このコーヒーを飲んだらアパートに戻ります。」