ライブの終了を告げるアナウンスが入ると一気に会場が明るくなり
人の移動が始まった。
一気に現実に引き戻された瞬間だった。
優花と果絵は人がある程度退くまで
その場に留まっていた。
「ちょっと!優花。さっきのあれ凄かったね」
あれと言うのは達央が最後に言った言葉だ。
「・・うん」
ステージから優花の顔は見えないものの達央の体の向きは
優花たちのいる方を向いていた。
果絵の興奮は覚める気配がなく
「だってさ、明らかに私達のいる場所に向って言ってたよ。
ごめんな・・・俺の我儘で・・だなんてもう~~!信じられない。
少し前の達が言う言葉じゃなかったもん。」
「そうなんだ・・・」
flybyのことは優花よりも断然果絵の方が知っている。
その果絵が言っているんだからきっと事実なんだろうと思った。
会場を見渡すとかなり人が少なくなってきた。
この後の予定はないし、今日は果絵と一緒だから
このまま帰ろうと思った。
「果絵、人も退いてきたし私たちもそろそろ帰ろう。」
「え?・・・そのまま帰っちゃうの?」
「・・・帰るけど・・・果絵は何か用事でもあるの?」
果絵は首を横にぶんぶん振った。
「そうじゃなくて。彼に会いに行くんじゃないの?」
「え?・・・別に約束してないし、きっとこの後ツアーの打ち上げ
があると思うし・・・今日は帰るよ。行こう?」
「ええ?・・・・うん」
果絵は納得できないながらも優花と一緒に会場を後にした。