「大切な人と喧嘩をしたんだけどなかなかごめんねと言えなくて切ない」
黄色い声が飛び交う。
「えーー?!達君?誰なのそれ?」
「うそ~~。」
うぬぼれなんかじゃないこれは自分の事だと優花はスクリーンに映る達央を見つめた。
「・・・て感じの歌です。きいてください『そのドアを叩いたら』」
語りかけるような歌声に歓声をあげる者などおらず。
その曲に聞き入ってるようだった。

好きだけど気持ちが時々空回りして知らず知らずに傷つけてしまっていたら
そのドアを叩いて教えてほしい・・・

といった内容の歌だった。
まるで今の自分たちの様に思えた。
お互いを大事に思っているのにそれが時々空回りして・・・
謝るタイミングも忘れて・・・
そう思ったら涙が溢れてきた。

歌い終わると大きな拍手が沸き起こった。
達央は席を立ちみんなに大きく手を振った。
何度も何度もありがとうを繰り返した。
そしてメンバーがステージを去る時
達央は目の前のマイクスタンドを握りしめた
「ちゃんと・・・君に届いたかな・・・・ごめんな…我儘な俺で・・」
その言葉は優花に向けて…だった。
会場にいた観客が急にざわつき始めた。
だが優花だけは大粒の涙でステージを去る達央を目で追っていたのだった。