「全く・・・そんな悪い冗談よして・・それにそんな昔の事」
どうしても川久保の言葉が信じられなかった。
優花からしてみれば川久保との会話はあの文化祭の時と
ちょっとした会話くらいだった。
それに、周りに川久保狙いの女子が多かったから敢えて話をしようとは
思わなかった・・・川久保とはその程度の付き合いだった。
いや付き合いというほどでもなかったと思う。
だから信じられなかった。
だが川久保の方はそうでもない様子だ。
「冗談言うためにわざわざ横田さんに桐谷の働いている場所聞くと思う?」
「じゃあ・・・なんて答えればいいの?
 その節は好きになってくれてありがとう・・・かな?」
今頃言われると返事に困る。
「やっぱお前って面白いやつだな」
笑っているように見えるが目は笑っていなかった。
それが優花にはわかった。
優花は時計をみると既に10分過ぎていた。
これ以上一緒にいるのはよくない様な気がし、
「ごめん・・・時間だからわたし帰るね。」
優花が席を立った。
「桐谷」
「・・何?」
「もしも・・・桐谷に会ってまた好きになった。って言ったら
・・・・どうする?」
優花は立ち止まり、そして振り返った。
「・・・・何もかわらないよ。私には達央さんしか見えないから」