扉の中は真っ暗で何も見えなかったが、奥に続いているのが分かった。
 ピーターが数え終わって、とうとう探しているようだ。
 エミリーは扉を閉め、重い服をかき分けて奥へと進んでいく。
 ピーターの声が、小さくなっていく。
「きゃっ」
 小さな悲鳴を上あげて、エミリーは転んだ。
クローゼットの中だというのに、湿っていて少し暖かいような気がした。
 そこは、闇のようなクローゼットの中ではなかった。見たこともない世界が広がっていた。
 エミリーはゆっくりと周りを見渡す。
 ガサッ。
「!?」
 ガサッ。ガサ。
 茂みの向こうで何かが動いている。森が静かなせいか、よく響く音だ。
 パキッと音がして、何かが出て来た。
大きくて黒いそれは、急いでいたようで、こちらへ真っ直ぐに走ってきた。
 エミリーもあちらも驚いて、
「あーーーーー!!」
「あーーーーーーー!!」
どちらも叫んでしまった。
 よく分からないそれは大きな木の陰に隠れてしまった。時折、不安そうな顔で、ちらちら見ている。
 エミリーは、ゆっくりと近づいて、くまが落としたかごを、手に取った。
 エミリーが差し出すと、クマははビクビクしながらも、そっと取った。