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「おにーさんっ!このお花くださいな!」



指差す先には黄色のスイセン。

綺麗な色を放ち、それは9歳の私の目に
一番に飛び込んできた。



周りには数え切れないほどの花があるのに。




「はい、どうぞ。」



丁寧に包装された1本のスイセンは
黒いエプロンをつけたお兄さんから私の元に
やってきた。


すうっと香りをかいでみる。

甘い、お花の香りがした。



「いい香りでしょ?」



そう、お兄さんはしゃがんで
私と同じ目線になってから聞いた。