「はぁッ…はッ…くそ…!」

どこだ!どこに いるんだ!

「ッ…!見つけた!」

横断歩道を渡ろうとしている
あの お婆さん…その周りが奇妙だった。

いつもなら、賑わっている通りに
人が1人もいなかった。
車も1台も止まってない。

間違いなく、時間は近づいている。

「婆さん!行くなッ!
 その先は、行っちゃ駄目だ!」

一瞬…ほんの一瞬だけ だけど

あの お婆さんが…
俺の方を、向こうとした。

…だけど、歩き始める。
信号が 進めの司令に変わった。

「ッ…行かせるか!
 そんな後悔してる顔のままで
 どこに行くつもりだよ!」

もうちょっと…もうちょっとで…!

追いつく…はずだった…。



お婆さんの姿が、視界から消えた。



いや、遮られた。

黒い布切れに、身の丈以上の大鎌。


あのお婆さんに憑いていた死神か…!


「くそ…どいつもこいつも
 邪魔なんだよッ!」


突っ込んで ぶっ飛ばしてやる!

握り拳を作り、速度は一切 緩めない。

「そこを、どけッ!」



ガキンッ!…と激しく金属が
ぶつかり合う音がした。



吹き飛んだ死神。

一体、何が…。

足が止まりそうになったその時。





「止まるな!そのまま 走って!」





聞き覚えのある…声がした。