晴れ渡る空。
最後に見るであろう
天気は、とても 良い天気 で
気候も、とても 穏やか で
春らしさを 感じさせる。

「運命に決められたことにも
 良いことは、あるんだな。
 特に、俺はそう思う…。」

「…はぁ~…本当、さっきから
 誰に、話しかけてるの…?
 それとも、詩人か小説家 志望?」

「う、うるさいな。
 ちょっとは、黙っててくれ。」

…等と、他の人には見えてない
死神と話している時点で 周りの目は
正直、痛々しい感じがする…。

「…黙っとこう…。」

そう呟いて、視線を周りから
前に 向けたときだった。

「うぉ…っと。」

お婆さんと ぶつかりそうになり
慌てて、身をそらした。

「あら…すまないねぇ。
 前を、見てなかったもので…。」

腰が、曲がった状態で
それ以上は 曲がらないらしく
頭だけを ペコリと下げる。

「いや、俺こそ不注意でした。
 本当 すいません。」

頭を、下げようとしたが…

「いやいや、良いのよ。
 お互い様みたいだしねぇ。」

ニッコリ とした笑顔を見せた。

「…すいません。
 後、ありがとうございます。」

笑顔で、返そうとしたが
笑顔が一番 苦手だったので
上手く出来なかった。

「いえいえ、それじゃあね。」

笑顔の後、お婆さんの表情が
影をおびていたのを、俺は
見逃さなかった。

「…?何か あったのか…?
 あのお婆さん…。」



「もうじき、死ぬからだよ。
 あのお婆ちゃん。」



お婆さんの、背中を見送りながら
死神さん は言った。

「じゃあ、もしかして
 あの人にも…。」

「うん、死神がついてるよ。」

「…あの、お婆さんは
 何を 願ったんだろうな。」

「そんなこと、あのお婆ちゃんと
 それを叶えた死神にしか
 分からないよ。」


だけど…何でだ?


あの お婆さんの表情…。


普通の人なら、1つであれ
大抵のことなら何でも
叶えることが 出来たのなら
あんな顔は、しないはずだ…。

「…直接、聞いてみるか。」

走って、お婆さんを追いかける。

「え?あ、ちょっと待ってよ!」