物心ついた時から
私は、ほの暗い蔵のなかで
息を潜めるように暮らしていた。
蔵からすこしだけ見える外の景色は
いつも眩しくて眼が見えなくなりそうだった。
私が10つになった時、一度だけ外に出たい
と母に言ったことがあった。
すると、母はごめんなさいを
繰り返しながら泣き始めた。
そして、母は私を抱き締めながらこう言った。
『 お前は鬼の子なんだよ 』って。
不思議と哀しくなかった。
あぁ、だから私は蔵で生活しているのか。
と逆に納得できた。
お伽噺に出てくる鬼と自分が同じと知ったのは
鬼が出てくるお伽噺と同じ…
桜の咲いた季節だった。
