「鬼が産まれる里?」

黒髪の若い青年は、酒場の亭主に尋ねた。

「興味深いだろ?
なんでも、一族の中に一人は必ず
ツノを持って産まれてくるんだってよぉ」

おっかねぇよなぁ、と亭主は続けたが
青年は、何か考えているようで
微動だにしないままだった。
そして、何か思い付いたというように
青年は、途端に口を開いた。

「なぁ、その里…どこにあるか知ってるか?」

「東と北の間なんざ聞いたことあっけど…」

しばしの沈黙が流れる。

「…なぁ、あんちゃんよぉ
まさかその里にいく気かい?」

亭主はそう聞いたが
青年はフッと口先で笑うと
助かった、とだけいい酒場を去った。