「あゆみ、お母さんねぇ
結婚したい人がいるの」

突然言われた一言。

まだ小学3年生の私には

深く考えることの
できない言葉だった。

「おめでとう。これで
私にもお父さんが
できるんだね!!」

「そうよ。でも、あゆみ
お母さんが結婚しても
いいの?」

「どうして?嬉しいよ。
私もお母さんもお父さんが
いれば幸せになれるんだ
から!」

「あゆみ…ありがとう。
3人で幸せになろうね」

「うんっ」


まだ素直な私。

この頃は幸せだった。

私にお父さんができる。

夢みたいだった。


私が産まれてすぐに

父は交通事故で死亡。

今まで母と2人で

寂しくも生活してきた。

お金に余裕がないから

幼稚園に通えなくて

いつもひとりで

過ごしてきた。

朝から夕方まで

母は働いているから

その間、古びたアパートで
絵を書く日々。

寂しかった。

友達もいない孤独。

母だけが唯一の頼りだった。

小学校に通うと

すぐに友達が出来た。

でも幼稚園での遊びや

世の中のことが

わからなくて

みんなと喋ったり

遊ぶのも出来なくなった。