図書館を出て向かいにある教務のカウンターの前を無言で通過しガラスの扉を開けて外に出た。
空は灰色で今でも雲が落ちてきそうな程にどんよりとしている。手をかざすと冷たくて細かい小雨が次々と手に当たる。

私は何となく図書館を振り返った。駐車場を挟んで立つ学校の建物はちょうど図書館の窓が駐車場に面しているので中の様子がよくわかる。だから窓際でパソコンに向かう彼の姿をはっきりとらえられた。
私の視線に気付いたのか彼はふと目線を上げ、私達は窓越しに見つめ合った。私は戸惑って視線を逸らした。私は彼に見つめられるのが恥ずかしかったのだ。

正直私は容姿に自信がない。小学生時代見ず知らずの上級生に通学路で待ち伏せされ、ブスと罵られたり、クラスで好きだった男子にはチンパンジーの様な顔と野性的キャラクターで人気の男性お笑いタレントに 似てると馬鹿にされた。それ以来同年代の男が怖くて中学からは女子校畑を歩んできたのだ。

だから自分すら見たくない自分の姿を男性に見つめられるのは嫌だった。しばらくすると彼はおもむろに立ち上がって図書館を出て、出口に向かい何と私の方に近づいて来た。また胸が高鳴った。