先生の教壇上の勇姿をぼんやりと思い出していると、ふいに誰かに肩を叩かれた事に気がついた。
「何してんの?授業さぼって」そう言われて振り返ると、同じクラスの女性が私に向かって爽やかに微笑みかけていた。まともに喋った事もないので名前は忘れた。確か私よりも 10歳くらい年上だったような気がする。
ハイウエストのデザインで袖がふんわり膨らんだ白いワンピースを着ている。胸元にあしらわれたリボンがかわいらしい。髪をさらりと後ろでまとめ、かわいらしいファッションの中にも大人の女の色気を感じさせる人だ。よくクラスの男子と恋愛談議をしているのを聞いていると、とてもたくさんの男性と恋愛してきたみたい。その経験の豊富さが色気となって出るのだろうか。
現にパッチリと特徴的な猫目でじっと見つめられたり、彼女がふっと柔らかく微笑むだけで女の私ですらドキドキしてしまうのだ。
彼女は躊躇する事なく私の目の前に座ると早速鞄から煙草を取り出し火をつけた。
「駅に向かって歩いてたらあなたの姿がみえたからさ。何してんのかなと思って。」
彼女はクラス委員だ。かと言って別に規律に厳しいとか特別責任感が強い という訳でもなさそうだけど、みんなが嫌がるクラスの飲み会の幹事や、クラス会議の議長など、皆が嫌がる事も快く引き受け、しかもキッチリ仕切るやり手の女性。そんな完璧な彼女に、よりによってこんな姿をみられてしまう罰の悪さに、私はただ俯くしかなかった。