「ふーん…」
渉の不機嫌が舞い降りて来そう。
あたしは素早く察知して、
少しだけ距離を置こうとしたんだけど……
「きゃっ…」
水槽をバックに身体が押しつけられてしまった。
渉の目の中には、動揺してるあたしと後ろでスイスイ泳いでいる魚さんが映っている。
「他の人がっ…」
「知らない、関係ない。
俺より魚?
…………むかつくからお仕置き」
そのまま渉が近付いてきて、
キスされる……っ
なんて思って目を閉じたら着地したのは水槽で、あたしの唇には重ならなかった。
それも、水槽には寸止めっていう。
魚さんもびっくりしてる。
あたしは力が抜けたように、
その場所に座った。

