リビングからは話し声がした。
あぁ、そうか。
兄貴がいるんだった。
ののかの相手でもしてくれてんだろ。
「………よ!」
「……だってば」
俺がリビングを開けた時、
「付き合ってよ……、好きになったんです……」
泣きながら兄貴の胸に飛び込むののか。
それを受け入れてる兄貴がいた。
「………」
部活のユニフォームが入っているボストンバッグが肩から落ちる。
ボトン……
「「……」」
二人がようやく俺に気付いた。
そして、事態の大変さに気付いた兄貴がののかを剥がす。
「ひ、輝っ!
これは……その、あの……」
慌てふためくののか。
気まずい空気。
「輝、ごめんなさいっ」
堪らなくなったののかは叫ぶようにそう告げて、俺の前からは消えた。
それから俺は可笑しくなっていったんだ。

