その日はなんだか甘い雰囲気にはならなくて。
ののかが上手くかわすから、
俺は頑張って耐えた。
その代わり、
「お兄さんってどこの大学なの?」
「たしか、A大だったかな。
あそこ国際関係とかで有名だろ?」
兄貴は高校の英語科教師を目指していた。
俺とは違って根っから頭がいいんだ。
「わぁ、すごいね!
実はあたしも英語の先生目指しててさぁ~」
自分の将来の夢を楽しそうに話すののか。
俺には夢がなかったから、
そんなののかが羨ましかった。
同時に、いつも比較材料に使う兄貴も
羨ましくて仕方なかった。
「ののかの将来に俺はいる……?」
キラキラ話すののかに
なぜか不安になった俺は問う。
「………いる、よ?」
「そっか、良かった…」
俺の安心が崩れたのはこの数日後。

