でも、裕貴くんが渉の話をしなくても
あたしは渉のことを考えていた。
今頃どこにいるんだろう。
誰といるんだろう。
何を考えているんだろう。
「あーぁ、俺に勝ち目はないのかー」
「え?」
裕貴くんは自分のお弁当のご飯を食べながら呟いた。
「いつも思うんだよ。
あ、もちろん東雲だけじゃないけど。
なんで両想いになってからも心配事って尽きないのかなぁとか、なんで両想いだったのに別れて互いに悪口言ってんのかなぁって。
俺にはさ、どっちもわかんねぇんだ」
こんな明るくてかっこよくて
女子から人気者なのに?
「東雲においては、教師だろ?
わかんねぇなー。
だからののかちゃんの気持ちも全然理解できない」
ちょっと悲しそうに言うから
あたしはどうしたらいいかわからなくなった。

