ゆっくり唇が離れると、私は思わず真尋くんを見上げた。

「俺の"好き"は、千夏にこうしたいってこと」
私を抱きしめながら言う。
「触れたいし…、キスしたいし…、抱きたい。
でも…、千夏の"好き"は、違うだろ?」

そう聞かれたら、私は頷くしかない。
だって…、
私の真尋くんに対する"好き"は、お兄ちゃんに対するような"好き"だから。
だから、恋愛感情はない。

でも…。
真尋くんにキスされて、イヤだとは思わなかった。
それがどういうことか、今の私には分からない。
気付くのは、もう少し先のこと。

「千夏、そんな顔するな。
お前を困らせたくて告ったわけじゃない。
いつもの千夏でいろ。
いつも笑顔の千夏が、俺は好きなんだから」
真尋くんはそう言って私の頭を撫でた。