極上笑顔の上司


その様子を、楽しそうに海人部長は眺めてから、
「実は、 
 柳田が綾菜ちゃんがティーが好きだから買って行けって。」

部長は、そっと私の耳元で
こっそりとつぶやいた。


ーーー!!

っ・・・

耳元にふわっと残る海人部長の甘い声と
綾菜ちゃんっていう響きがなんか
くすぐったくて、
思わず 足がすくむ。

何だろう。

なんか・・・




「あーー海人部長っ
 だからー俺の綾菜さんを口説かないでくださいってば!」

「なんだ、香川と付き合ってるの?」

「違います。」

いやいや、
所有物みたいに言われても・・・

香川君はぐっとこぶしを握り締めて、
部長に叫んだ。

「俺、今、全力で
 綾菜さんを、口説き中です★」

「あははは。お断りします。」

「えー。綾菜さん。ひどーいっ。」


もう、香川君ったら、ホント軽いノリで冗談ばっかり。
こんなやり取りも、この部署が仲がいいっていう証拠だと思う。


そもそも、私は香川君と付き合う気など毛頭にない。
それに、香川君だってモテるんだから
多分本命の彼女がいいるらしい。
牧瀬さんが、「香川って、意外と一途で・・・」って前話してたし。

軽そうに見えるのにね。
そういう人の方が一人の人に一途なのかしら?