極上笑顔の上司


海人部長は、
淡いブルーのネクタイを結び直すようにきゅっと手にかけ、
ジャケットと書類を何枚かもって
スタスタと歩いてくる。

よかったーー

時計をちらりと見ると、
5時少し前。

柳田さん。
待つのも仕事って言ってたけど、
待つのも大変だから。


思わず海人部長を目で追ってたら
ふと 部長と目があった。

にこっと笑って頭を下げながら、
「外出します。」

「はっ。はい・・行ってらっしゃい。海人部長。」


あ。見てたのがばれちゃった。


でも、海人部長は気にすることもなく、
さっそうと部署を後にした。

まぁ、見られるのには慣れているだろうから
気にもとめないんだろうな。



「うーーーー。
 綾菜さん・・・部長を見てたんですか。」

「へ?うん。見てたけど・・・」

「・・・。そうですか。

 ・・・・・・・なぜですか?」

「なぜって・・・五時前に海人部長が外出でよかったなぁって思って。」

書類に目を通しているときに話しかけないでほしいな。

「五時・・・あ。そっか、
 そうですよね。
 部長が先に帰っていれば、俺たちも帰りやすいし。」

そうかそうかと、香川君は自己完結をして
再び仕事を再開させる。

ちょっと違うけど、
まぁいいか。

そんなことを思いながら、
私は仕事を終了時間まで頑張ってやるのでした。