二人の会話を聞いていたのだろう。
斜め向かいの香川君が心配そうに覗き込んできた。
「あの・・・
綾菜さん。『パパ』いるんですか?
遊んでるって・・・・・・大丈夫ですかーー?」
「やだ、香川君。
大丈夫も何もっ。
いい知り合いができたってだけよ?」
「そうですか。よかった。」
よかった?
「あら、香川君。私ってご年配のオジサマに貢がれる女に見えるの?
まったくもぉ。」
私が冗談交じりにいうと、
香川君がにかっと「ちがいますよ~。俺が綾菜さん狙ってるんで。」といって笑った。
うーん。
狙われても、困る。
「ははは。ありがと、口がうまいねぇ。」
っていうか、香川君、誰にでも言ってるんだろうな。
って、笑った彼の机の上は
大量の資料。
「・・・
ねぇ、香川君。
手伝おうか??」
「えっ?!!いいんですか?!
助かります!!愛ですね!」
愛?
愛っていうか、単なる仕事の手助けなんだけど。
「・・・愛っていうか、仕事よ?」
ちょうど私の仕事はひと段落終えたぐらいだったから
そのかわいそうなくらいの大量な
書類たちをいくつか手伝える余裕はあるし。
いくつかを手に取るとーー
「へぇ、
新しくオープンする商業施設の
webデザイン?」
「そーっす。各フロアがテーマ別とかなので、
いくつかのデザインが必要でーーー」
「じゃぁ、私はテーマモチーフを集めてみるから・・・」
なんて、香川君と話をしていると、
ふと奥の席から部長が立つのが見えた。

