…ふーん。
傷付けたくない、ね。
そんな五十嵐くんを見てあたしは少しだけ笑いをこぼした。
「ねぇ。」
「はい?」
「恭平くん…って呼んでもいい?」
あたしの問い掛けに
少しだけ戸惑った五十嵐くんは
「別に、いいですけど。」
と躊躇いがちに答えた。
可愛いな。
やっぱり、あたしこの子が欲しい。
合コンに来て、酔わせちゃえばこっちのもんなんだけどな。
「まぁ、考えといて?恭平くん。」
とっておきの笑顔を振り撒いたあたしに
「…飲み会なら、行きますから。」
と、遠慮しながらおぼんを持って食堂の出口へと向かう彼。
遠ざかる彼の背中を見届けて、微笑みを絶やさずに溜め息を吐いた。
…ま、この手の男はゆっくりアプローチして落とせばいい。
焦らずに、それが一番の近道。

