正直、彼の気持ちには気が付いてはいた。
…自分が、彼に惹かれ始めている事にも。
だからこそ、虚勢を張って彼に壁を作っていたのに。
どうして、あたしの中に入ってくるの?
「…子供、居たんだ。」
ヒロくんの口から言葉がこぼれ落ちる。
偶然街で会ったあたし達は互いに視線を泳がせながらも、懸命に言葉を繋げた。
「…あぁ、うん…。」
彼の視線はベビーカーで眠る菜々美に向けられていて。
ずっと隠してた子供の存在も、こんな偶然でいとも簡単にバレてしまった。
…隠す必要なんてないのに。
彼にどう思われようと別に関係ないじゃない。
…どうかしてる。
今まで被ってた化けの皮を剥いで、いっその事彼に嫌われてしまえばいいんだ。

