あなたに出会ったのは
そんな繰り返される毎日にうんざりしていた時だった。
「名前、何て言うの?」
「な、名前?」
「そう、あなたの名前。」
彼、ヒロくんについたのはそれが初めてだった。
最初は何も話さないし、妙に気取ってるイメージだったけれど
話してるうちに打ち解けていって。
いつもオヤジ相手ばかりしていたからだろうか。
同年代の彼は
何だかとても身近に感じる。
それからヒロくんは
『暇だったから。』とか『飲みたい気分なんだ。』とか理由をつけては
あたしを指名して来てくれた。
嬉しい、と感じる一方で胸の中で疼く感情が溢れないように必死で。
…恋はしない。
菜々美と二人で生きていくんだ。
何度も自分にそう言い聞かせた。

