左側で一つにアップされた髪のおかげで、彼女の右側に座る俺は
遠慮なく世里菜の横顔を見つめた。
「あたし、もう恋はしないって決めてるの。」
「子供が居るから?」
彼女は返事に困るとすぐに黙り込む。
そして斜めに降ろされた前髪をうっとおしそうに耳に掛けると
「ヒロくんになら、もっといい子が居るんじゃない?」
と、小さく呟いた。
まぁ、ぶっちゃけ
世里菜の言う通りなんだけど。
「でも、俺が好きになったのは世里菜だし。」
「よくそんな事言えるよね。」
はぁ、とわざとらしく溜め息を吐いて
「どうせ」と言った彼女は山積みにされた灰皿を見つめながら
「勘違いだった、って思う時が来るよ。あたしなんか、好きにならなければって。」
言ってトイレに向かって立ち上がった。

